神奈川新聞の読者投書欄「自由の声」から

川崎市川崎区(自営業)    松本泰男

公民館などの有料化推進を

先月20日の本誌教育面で公民館有料化の特集を読みました。有料化推進論は主に市町村財政に注目し、反対意見は、「昔から無料」「景気が悪化している」「健康に良い」などでした。

しかし、気になったのは「民間との競合」の視点が欠けていたことです。公民館などが無料、あるいは無料同然の低料金であるため、民間で同様の事業を営む者がどれだけ経営を圧迫されているかという考慮はなされていたでしょうか。公民館、地区センター、老人憩いの家などの公共施設を、特定の人だけが個人的な趣味やけいこ事などに利用する場合、当然有料化すべきだと思います。この点について、帝京大・佐藤春雄助教授が次のような論を展開されていました。「受益者負担なら公益性があるから皆に負担を強いても良いが、利用者負担は特定の人のみに負担を強いることになるので問題がある」。理解し難く、話はあべこべだと思います。有料化で職員負担が増すというのも空論で、職員はさほど多忙ではなく、民間なら片手間の仕事だと思います。

例えば碁会所ではおおむね千円前後の席料を収入源としていますが、多くが顧客減に苦しみ、縮小、閉鎖に追い込まれています。その主な原因が地域にくまなくある公民館などの無料政策にあるのです。公民館などの中には部屋貸しだけでなく、碁盤常設の施設もあります。いくら碁会所が経営努力をしても、「駐車場つきで無料」の公共施設とは競争になりません。
囲碁は健全で安価な趣味です。大量退職時代、碁会所は本来、成長産業であるはずです。しかし、私の友人が経営する碁会所も閉鎖に追い込まれました。公民館などでは施設を増強し、主体的に活動を活発化しているところもあります。民活、民営化を声高に叫びながら、これではまるで「官活」であり「民殺」です。ひどすぎます。
碁会所だけではありません。大は民間経営の運動施設やカルチャーセンター、小は住宅地の中にあるお花や詩吟の個人教室まで、すべて大きな影響を受けています。これではちまたの文化は育ちません。「税金でつくって、税金で運用しているから無料」などという考えが許されるはずがありません。

こういう議論ですぐ、「恵まれない人」がテーマになるのも気になります。福祉の観点は大切ですが、大多数の市民は生活に困っているわけではありません。公民館などの個人的利用は、相場に準ずる応分の利用料徴収を強く望みます。利用者も趣味やおけいこというからには、自分のお金を出しましょう。