神奈川新聞の読者投書欄「自由の声」から

清川村(自由業)    加藤しのぶ

「人対人」思い出させる囲碁

「お兄ちゃん、一局勝負しようよ」「よしいいぞ−」。最近我が家でよく交わされる中1の長男と小2の二男の会話である。勝負は囲碁。対戦場所はこたつの上であったり、はたまた布団の上であったりとさまざまだ。

昨年の夏から二男は、地域の方がボランティアで教えてくださる囲碁教室に通っている。教室のある日には、学校から帰るとすぐ飛び出していくほど夢中である。

兄弟二人で囲碁を打っているときと、ゲーム機で遊ぶときでは会話の量と内容が違うことに気付いた。ゲーム機は嫌になったら勝手にやめ、リセットもできる。しかし、囲碁に限らず、人間対人間では相手の同意があって初めて、始めることも終わることもできる。つまり、相手への気配りがなければ「それ」はできないのだ。だから、必然的に相手の技量や都合などをうかがい、会話の量も増える。

二男は教室での対戦成績が振るわず、出掛けたときの勢いはどこへやら、しょんぼり顔で帰宅する日もある。しかし、それでいいのだ。人間対人間だもの、ゲーム機のように思い通りには進まない。囲碁ブームは「人間対人間」を忘れかけていた子供らに刺激を与えてくれているようだ。


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