特別寄稿


府川浩二さんの活躍


日本棋院神奈川県支部連合会 編集事務局

今年大活躍したのは府川浩二さんだった。
元々横浜国立大学の囲碁部の主将であったから、最初からトップアマであることは間違いない。外連(けれん)みのない重厚な碁で、多くの県内の強豪はその実力を高く評価していた。ところが、不思議と勝ち運に恵まれず、今まで神奈川十傑選で3度優勝がある(内連続優勝1回)だけで、他の棋戦では余り振るわなかった。実に気持の優しい方で、そこのあたりが災いしたのかもしれない。
しかし、今年に入って大ブレーク。五大棋戦で2冠に輝き、団体戦でも府川さんの率いるチームが殆どの優勝をさらった。
五大棋戦である個人戦では、5月の「朝日アマ十傑戦」で優勝し、9月の「世界アマ選手権神奈川大会」でも優勝した。このほか、「毎日本因坊戦」ではベスト8に進出し、振るわなかったのは「根来杯最強戦」と「神奈川十傑選」だけであった。強豪ぞろいの神奈川県で、これだけの成績を残すのは難しい。
しかし、府川さんの成績はそれだけではない。団体戦の活躍も目覚しいものがあった。
先ず、3月の「毎日杯神奈川県都市対抗戦」には横浜市Aチームを率いて優勝。この余勢を駆って8月の第1回「東日本都市対抗戦」でも堂々の優勝。そして、「神奈川13将戦」でも優勝し、主要な団体戦で優勝できなかったのは、11月のブロック戦(3位)だけであった。個人・団体合せて五冠王(?)である。
団体戦の場合、府川さんは一選手として参加するのではなく、いずれの場合も主将であり、世話役でもある。碁会所を経営し、『若葉会』の総大将でもある府川さんの下には、県下の強豪が集い、将来有望な子供や女性たちも数多く集まる。その成果が、毎日杯都市対抗戦のように老若男女、世代を超えた選手をチーム編成しての活躍につながっているように思う。
府川さんの碁会所にはトッププロも訪れる。これらの方々との触れ合いも、府川さんを益々強くしていくことであろう。

府川さんは今年お父さん(府川一郎さん、享年81歳)を亡くされた。
「朝日アマ十傑戦県大会で優勝し、全国大会までの間に父が亡くなった。父に電話で優勝を報告した時大喜びし、全国大会を応援に行くと言っていた。当時脳梗塞のリハビリ中であり、とても無理だと思っていたが、遺品の手帳には全国大会のスケジュールが書き込まれていた。1勝しかプレゼントできなかったが、喜んでくれていると思う。今年私は団体戦を含め実力をはるかに上回る成績を残せたが、父が後押ししてくれたとしか思えない」と府川さんはしみじみ語る。
ご父君は二宮高校の校長を最後に退官され、長い間神奈川新聞社の囲碁欄の観戦記を担当しておられた。神奈川県囲碁界に大きな足跡を残された方である。お世話になった囲碁愛好家も多いことと思う。
お父さん、良い息子さんをお持ちになりましたね。ご冥福をお祈りいたします。