特別寄稿


囲碁の不思議


日本棋院神奈川県支部連合会 会長   根来文生

私の仕事は、電子計算機のソフト課題を解決する方法論を探る研究と其れを実用化する事です。
其の為にこの仕事を忘れて他の何か没頭する時間を上手に持つことがなかなか出来ません。これは私の個人的な性格や才能の限界に因るのだと思いますが、人生の達人から見れば、お恥ずかしい限りです。
しかし、これが私の40年近くの生き様なのです。

43歳(23年前)の時にある事情で囲碁の時間を持つことになりました。其の動機には少しでも仕事が忘れられる時間が持てればと言う事にあった様に思います。しかし、盤面に向かうと、何を考えているのか自分でも良く分かりませんが、何かを考えてしまう事は確かです。ふとわれに帰り其れを断ち切る様に盤面の状況とは無関係に石を置くはめになってしまいます。
その結果、私の持ち時間は10分程もあれば相手の強弱に関係なく十分になってしまったのです。

私たちの業界ではIBM社と言う巨人が居り、かって「考える」をキャッチフレーズにされていました。
其れに対し、私の研究は其の以前から「考えない」ようにする術の理論を求める事にありました。これはもっと正確に触れなければならない問題ですが、ここでは省略をご容赦戴きたいと存じます。
私の場合、碁会所で相手して戴く方には申し訳ないのですが、正直に言いますと、其処は私の理論の実験上のひとつなのです。

最近、信じられない事に私共の商品がお客様からご支持を戴ける様になって参りました。
考えられるその理由のひとつには私共の商品説明の進化があげられます。
其の為かどうか私の打ち時間は益々考えない最短化を目指す勢いです。
更に信じられない事は230点台に低迷していた私が急激に250点台(点数と段位の関係はノーコメント)に到達し、どうやらこのままで年を越せる有り様です。
改めて囲碁の進化問題は本当に不思議だと思う次第です。

囲碁好きの皆様にもそれぞれの囲碁の不思議がお在りだと存じます。
僭越でございますが囲碁好きの素人の特権とは、密かなる楽しみを持たれて盤面に向かう事に一興があるのではないでしょうか。
皆様のご健康とご繁栄あらんことを祈念してご挨拶とさせて戴きます。