寄稿


                           若者達の活躍に喜び 奇跡のベスト8 

元アマ本因坊  原田 実
私が71歳を迎えた平成19年、年々ポカミスが多くなり、自分は不成績ながら、周りの若者達が大活躍して神奈川県囲碁界の歴史を画する快挙を成し遂げ、幸せな一年だった。
「みのる会」の本拠として長年お世話になっている『囲碁サロン宇宙棋院』が6月に開設15周年を祝った。その頃から、今年は何か良いことが起こりそうな予感がしていた。
7月の中学校団体戦で浅野中学校(諌山周平・山田亮・桑折樹)が全国優勝。3人の選手だけで昨年8位に入賞して以来、学業と運動部活動の忙しい中、寸暇を惜しんで練習を積んだ。私も時々指導をしてきて、期待はしていたが、麻布中などの伝統校に勝っての優勝だから凄い快挙である。
8月のアマ本因坊戦で瀧澤雄太君がついに初優勝。大学時代に学生二冠を制し、その実力はつとに認められていたが、社会人になって4年目、ようやく落ち着いてきたのだろう。その才能がいよいよ開花した。決勝戦の会場に行った太田匡彦君から喜びの速報が入った時、わが事以上に嬉しく、老いの寿命が何年か伸びそうな喜びであった。
洪マルグンセムアマ名人との決勝戦は瀧澤君らしい厚みの一局。テレビで見た"はにかみ王子"石川遼選手の一発ホールインに共通するようなものを感じさせた神業の半目勝ち。名勝負であった。
私も参加したアマ本因坊戦、2回戦で平田博則さんと久しぶりに対局。80歳には見えない迫力だが、私以上の見落としはやはり年のせいか。続く3回戦、学生本因坊高津昌昭君には負けても仕方ない相手。ところがいまや定番となったポカミスや時計押し忘れも出なかったのは奇跡的だった。次に瀧澤君と当たるので、どうせ負けるのならもう一局、とすがる思いがどこかにあったのか。瀧澤君のお陰で奇跡的にたどり着いたようなベスト8であった。
9月の世界アマ代表決定戦は、土棟喜行君に早々にポカを打って敗退。昨年の森洋喜君、村上深君もそうだったが、最近私は若者達の初優勝のメーカー役をつとめている。ベスト8も今は厳しく、遠くなりつつある実感である。

<第53回全日本ア本因戦> 準準決勝戦

 黒  原田 実(招 待)  vs  白  瀧澤雄太(神奈川)----総譜1−40、以下略 白4目半勝ち

自戦コメント: 白40が絶好点で、早くも細かく黒が負けそうなムード。終盤「石の下」を見損じて取られ、4目半の大差となった。