寄稿

祝「アマ名人」 常石隆志さんさん

編集局
快挙! 常石隆志さんが、初出場で史上最年少のアマ名人になった。
第4回朝日アマ囲碁名人戦全国大会が7月19日から2日間、日本棋院で開催され、神奈川代表の常石さんが見事優勝を果たした。
 続いて行われた尹(ユン)アマ名人との「アマチュア名人戦三番勝負」でも2連勝し、18歳と言う若さで、史上最年少のアマ名人に輝いた。

 先ず全国大会では、1回戦香川の福崎秀人選手、2回戦全国大会優勝経験のある埼玉の木下暢暁選手、3回戦京都の大谷直輝選手を撃破し2日目に駒を進めた。準々決勝戦では、相手の元世界アマ選手権者の平岡聡選手が体調不良で棄権し不戦勝となる幸運もあった。準決勝戦では関西の古豪、招待選手の西村修選手に黒番中押し勝ちした。決勝の大一番の相手は、これも招待選手の愛媛の田中正人選手。「慎重に」との気持ちが裏目に出てリードを許す展開となったが、相手のミスもあり白番4目半の逆転勝ちを果たした。不利な状況でもじっと耐え、相手の田中選手が「なぜ負けたか分らない」と感想を述べるほどの接戦であった。

 アマ名人戦の熱気もさめやらぬ7月25日と26日の2日間、「第4期アマチュア名人戦三番勝負」が湯河原町の「ゆがわら石亭」で開催された。常石さんは初めてスーツを着て、ネクタイを締めるのもスタッフに手伝ってもらって登場した。
第1局は、常石さんの白番。昨年名人の尹春浩さんが局部で上手く立ち回り、大きくリードをしたが、秒読みでミスを犯し、大逆転で常石さんが先勝した。一夜明けて第2局は常石さんの先番。中盤までいい勝負だったが、突然尹さんが乱れて敗勢となった。常石さんは優勢になっても緩むことなく勝ちきり見事2連勝、この棋戦の前身の朝日アマ囲碁十傑戦と併せて、史上最年少タイ記録でアマ名人に輝いた。
尹さんは、アマプロオープン戦などでは、日本のトッププロも負かしてしまうほどの強豪。その尹さんに2連勝するとは、全く驚きと言うほかない。
「嬉しいです。出るからには1局でも多く勝とうと思って臨みました。相手のミスに助けられて、運が良かったと思います。いい勉強になりました。プロ試験も頑張り、世界で戦える棋士になりたい」と常石さんは喜びを語った。

 常石さんは「ヒカルの碁」のアニメをきっかけに囲碁を始め、20年11月までは日本棋院の院生だったが、17歳の院生年齢制限までにプロにはなれなかった。しかし、その修行の成果は十分に発揮されており、大会審判長の上村陽生九段は、「随所に筋の良い手を放ち、院生時代よりも強くなっているようだ」と語る。この勢いをそのままに、棋士採用試験にも合格してもらいたいものである。

 7月30日には三浦市役所を訪問した。訪問を受けた吉田英男市長は「小さな市で、全国のトップに上り詰めた人材がいるとは誇り」と目を細めた。

(なお、常石さんのお師匠さんである中山弘先生からのご寄稿も、併せてご覧下さい)
(また、特選棋譜 全国大会優勝戦、名人決定三番勝負第2局も ご覧下さい)


特選棋譜
<朝日アマ名人全国大会決勝戦> 
黒  田中正夫(愛媛・招待) vs  白  常石隆志(神奈川)
互い先 先番6目半コミ出し
174手以下略 白4目半勝ち

<朝日アマ名人決定戦三番勝負> 
黒  常石隆志(全国大会優勝) vs  白  尹 春浩(前年名人)
互い先 先番6目半コミ出し
168手完 黒中押し勝ち