酒井 猛九段の老人ホーム囲碁教室のご紹介           

                   ・・・ 風光明媚な三浦半島の葉山、油壷にて ・・・

はじめに
 酒井猛九段が葉山と油壷の有料老人ホームで囲碁教室を開講されました。老人ホームの見学と囲碁教室参加への招待を久里浜囲碁クラブ(南横須賀支部)にいただきましたので、興味を持った当囲碁クラブのシニアたち数名が、老人ホーム見学を兼ねて参加いたしました。
 本ページ編集者の私も、”切れ味鋭い”碁で有名な酒井猛九段が、一体どんな教室を開かれているのかに興味をもち、早速、取材させていただきましたのでご報告いたします。

)酒井猛九段のWikipediaでの紹介はこちら

場所
(1)場所
@介護付き有料老人ホーム「葉山の丘
毎月第2水曜日、午前10時〜11時半ころ
三浦郡葉山町一色408
JR逗子駅より、京急バスで約20分

A同「油壷マリーナヒルズ
毎月第3水曜日、午前10時〜12時ころ
三浦市三崎町諸磯1523-1
京浜急行三崎口駅より京浜急行バス20分、シャトルバス有り

教室の様子
 酒井猛九段の打ち回し上手な指導碁、ポイントのところは一言アドバイス、それでも次第に勝負にされていく局面変化に、あちこちで生徒の悲鳴が上りました。
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@ 葉山の丘----13/07/03
多面打ちによる指導碁と記念撮影

A油壷マリーナヒルズ----13/08/21
正面玄関のクラシックな雰囲気での多面打ちによる指導碁

 私も指導碁を打っていただきましたので、ご参考までに、打ち掛けまでの私の4子局の筋悪碁をご紹介いたします。九段の先生は、関西棋院の森野節男九段もそうでしたが、置碁の指導碁は若い棋士よりもとても強い印象を受けました。

 酒井猛(日本棋院九段、白) vs 梶原俊男(県六段格、4子)----黒124手までで打ち掛け、白大優勢

昼食座談会    
 教室の後、昼食をご一緒させていただきました。週刊碁に時々載る、酒井猛九段の「これぞプロ!」の記事はいつも興味深く拝読していますが、これから始まる昼食会で先生からどんなお話が聞けるかを楽しみに、車で、新鮮な三浦のお魚が食べられる「グルメ館豊魚」へ向かいました。

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<昼食座談会 13/08/21>
 酒井猛九段は、鉄火丼が大好きだそうです。食事しながらざっくばらんなお話に花が咲きました。碁始めをする年配者が結構いる、毎日どこかで対局して長生きされている、介護に適している、認知症に昔の趣味を、囲碁を教える資格試験を取得してボランティア活動でも若干の収入が得られるとよい、会社のリタイア研修での囲碁活動の紹介ができるとよい等々の話に花が咲き、瞬く間に時間が過ぎました。 
 お話は多岐に亘り、日常的なことから日本の碁界のあるべき姿まで、プロとアマとの率直で、新鮮な意見交換が行われました。特に、日本の碁界のあるべき姿について提唱している三大改革案、日本囲碁文化の礎となる日本囲碁規約の改良案、更には、インターネット時代への新たな対応が必要なことなどのお話がありました。
 
 新たな対応については、サッカーや相撲などを参考にして、囲碁の魅力(ブランド力)を高めていくモデルを構築して行く必要があることを述べられ、我々も全く同感です。ここに参加の我々シニア六人のうち二人がスマホを持っている現状ですが、スマホではリアルタイムの対局は難しいけど、メール碁は最適と思いますとの酒井猛九段のご提案に現実味を感じました。

 さらに、酒井猛九段は、仲間の棋士と先駆的なネット棋院を立上げられています。本棋院は、特許を取得されているほど、いろいろ工夫されていてユニークです。ネット棋院の対局操作手順の中に、日本囲碁規約が使いやすく実現されています。皆さん、一度、訪問されてはいかが。

囲碁と福祉との関係の背景
 今回、酒井猛九段の囲碁教室は、(株)日本ライフデザインの介護付有料老人ホーム「葉山の丘」および「油壷マリーナヒルズ」で開講されています。当社は、「自らが受けたいと思う医療と福祉の創造」を理念とし、また、医療福祉の湖山医療福祉グループに所属しています。酒井猛九段の囲碁教室は、ホームに入所されている老人たちや周辺の住人たちの”碁楽”や健康維持に貢献しています。このことは、囲碁が、社会福祉の一役を担っていることを物語っています。

 ここで、ソーシャル・ビジネスと囲碁との関係について述べます。

 ムハマド・ユヌス はバングラデシュの経済博士で、2006年に、ノーベル平和賞を受賞しました。ユヌスは、バングラデシュのジョブラ村で貧しい女性を主対象に、無担保で少額資金を貸し出すマイクロクレジットを創設しました。これは新しいタイプの貧困対策として国際的に注目されました。ユヌスは、人間は多元的な存在であり、利益の最大化のみを図るのがビジネスではなく、異なるビジネスモデルとしての「ソーシャル・ビジネス」を提唱しました。ソーシャル・ビジネスとは、特定の社会的目標を追求するために行われ、その目標を達成する間に総費用の回収を目指すと定義されています。ソーシャル・ビジネスは、一つ目は社会的利益を追求するビジネス、二つ目は貧しい人々により所有され、最大限の利益を追求して彼らの貧困を軽減するビジネスです。
 
)Wikipediaでのソーシャル・ビジネスの解説はこちら

 次に、囲碁に対する見方はいろいろありますが、日本では、歴史・文化に多く登場している、形の美しさ、大局観などから、囲碁は芸術性が高いと見るのが主流になっています。また、新たな視点として、囲碁を認知症の予防や脳障害のリハビりなど、健康や福祉への応用が注目されていますが、これらは囲碁に限ったことではありません。一方、 中国や韓国では、囲碁はマインドスポーツ(頭脳スポーツ)として位置付けられています。

 囲碁は、芸術性と頭脳スポーツ性を持っていることから、人間生活に有効に応用できます。(株)日本ライフデザイン社のビジネスは、上述のユヌスの定義する一つ目に該当すると思われます。

取材・編集後記
 今後の日本の新しい囲碁の展開にアマとしてどんな貢献ができるかを、県囲碁連盟傘下のシンクタンク「碁ルネッサンス」で検討しています。この立場から酒井猛九段の老人ホームでの囲碁教室に興味を持ち、取材させていただきました。
 上述のソーシャル・ビジネスとして、(株)日本ライフデザイン社は福祉面での社会貢献をされていると思います。また、酒井猛九段の囲碁教室は高齢者の健康維持の面で社会貢献されていると思います。ここに、両者の接点があり、このように、新しいネット時代の流れの中でのコラボレーションを展開して行くことが、新しいブランド力を生み出し、多くの方々からの賛同を得られれば新しいビジネスの市民権を得ることに繋がると思います。
 
 終わりに、酒井猛九段の老人ホームでの囲碁教室のご発展を祈ります。今後とも、このような、大きな流れの中で囲碁愛好家は囲碁人生を楽しめたらと思います。

 今回は取材させていただきましてありがとうございました。
 

取材・編集>梶原俊男(県支部連合会/県囲碁連盟)