第2回電聖戦を取材して | |||||||||||||||||||||||||||||||
依田紀基九段、4子で、1勝1敗!! |
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はじめに 囲碁は、従来、お年寄りが親しむもので、難しく、なんとなく暗いものというのが大方のイメージではなかったでしょうか。一方で、世界の囲碁人口は4000万人とも言われ、日本の故岩本薫九段が私材を投げ打って世界に普及させたことから、世界の囲碁用語は日本語です。確かに囲碁は難しく、このため、囲碁とどう接するのかは、認知科学や人口知能などから見て面白い研究テーマになっています。囲碁の明るい面をお伝えすることで囲碁の普及に貢献できればと思い、 電気通信大学で行われた 第2回電聖戦(依田紀基九段 vs 第7回UEC杯コンピュータ囲碁大会優勝・準優勝ソフト)を取材いたしましたのでご報告いたします。 (注1)優勝、準優勝のソフト、それぞれ Zen、Crazy Stone(CS)、開発者、それぞれ加藤英樹さん・尾島陽司さん、Remi Coulom さんのご紹介は、当日配布されたこちらのチラシでどうぞ。 (注2)報告は筆者の取材メモによるもので、聞き違いや、不適切な表現などが含まれているかもしれません。その場合は予めご容赦のほどお願いいたします。 日時 2014年3月21日(日) 13:00〜 会場 〒182-8585東京都調布市調布ヶ丘1-5-1 国立大学法人 電気通信大学 西9号館3階 AVホール 主催 エンターテインメントと認知科学ステーション(代表; 伊藤毅志同大学助教) 協賛 東進ハイスクール/東進衛星予備校、株式会社囲碁将棋チャンネル 後援 公益財団法人 日本棋院、一般社団法人人工知能学会、コンピュータ囲碁フォーラム 動画放送 囲碁・将棋チャンネルにより、竜星囲碁チャンネルにおいて生放送が行われました。 対局条件 こちらです。今回は、昨年の対戦で1勝1敗と互角であったこと、また今年のUEC杯のコンピュータ同士の対戦から、顕著な進歩が見られなかったことから4子で対戦するということなった。(電聖戦運営委員会、3月18日) 対局の様子 (注)インデックス写真をクリックすると拡大写真が表示されます。 (1) 対局環境
(2) オープニング
(3) 解説の様子
@ 棋譜 ・第1局 依田紀基九段(白) vs Crazy Stone(黒) 4子局 ----黒 2.5目勝ち ・第2局 依田紀基九段(白) vs Zen(黒) 4子局 ----白中押し勝ち A 対局後のインタビューから ・依田九段: CS(Crazy Stone)の予想はあたらなかった。思ったよりいい手を打ってくる。天頂の碁に引きずられしまった。Zenは調べてあったので予想できた。危ないところはほっておき、また、入って来ない。今後は、プロが負けない程度に強くなってほしい(笑)。 ・Coulomさん: 全体にうまく行ったが、最後は恥ずかしい。3子は難しい。 ・加藤さん: アマ6、7段程度か。細かいところが出来ていない。関係者の支援を得てゆっくり進歩させたい。 ・小林九段: プロが4子で真剣に打っているのを始めてみた。Zenは前半石がのびていた、後半はアマ八段はある。平均に打たれたら勝てない。共に将来性がある。普段から練習して勝ちたい。 ・王九段: 1局目はCS、2局目は終盤一時黒に残っていた。アマ高段者のレベルで、練習に使える。いずれプロの参加する対戦があると面白い。 (注)Zenについては、日本棋院の月刊誌「碁ワールド」2013年6月号の特集に紹介されています。また、同8月号からは、Zenとプロ棋士の9路盤研究として、大橋拓文五段の「ナインサイエンス」の連載が続いています。 (4) エンディング @ 表彰
A 終わりのご挨拶 取材・編集後記 4子で1勝1敗とはかなり強いと思います。事実、3月の第7回UEC杯コンピュータ囲碁大会優勝のZenは、エキビジョンマッチで、電気通信大学囲碁部の田中義国さん(六段)との互先で白番で勝っています。小林九段の今日の評価はアマ八段と言われています。一方で、松原先生、伊藤先生は、このところ伸び悩んでいると謙遜されていたようですが、着実に強くはなっていると思います。プロに互先に打てるようになるには、さらなるブレークスルーが要るようです。 伊藤先生のおっしゃる「人間の生活に役立つ研究」について、今回の第2回電聖戦でどんなテーマが垣間見えるのか、解説者の会話と対局後のインタビューの中に素人目で探ってみました。例えば、以下のような内容が面白いと思いました。 @ プロ棋士の個性の差に相当する囲碁ソフトの個性の差がZenとCSとの間にあるようです。将来は、一つのソフトで、個性差のオプションを選べるようになるのか。例えば、武宮九段と打ってみたいなど。 A 勝敗については、人間はスコアの差の最大を目指す、コンピュータは勝率を目指す、が両者間の大きな差のようです。この差を感じさせない対局はどのように実現できるのか。 B 服装、石音など、五感を意識した対局は必要なのか可能なのか。例えば、コンピュータは会心の一手を石音高く打つのか。 電聖戦を観戦し、囲碁がコンピュータ・サイエンスの発展に面白いテーマを提供しているのが解り、取材目的の囲碁のもつ明るさを改めて感じることができました。 是非、ZenとCSとが切磋琢磨し、世界のコンピュータ囲碁ソフトのトップランナーを常に堅持していただきたいと思います。伊藤先生、取材の機会を与えていただきましてありがとうございました。 |
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<取材・編集>梶原俊男(県囲碁連盟) |