囲碁のルールを学ぼう!!          
●○●平成24年度版および平成25年度版の神奈川囲碁年鑑より●○●
 囲碁愛好家の皆さん、日頃何気なく打っている囲碁のルールについて勉強した事はありますか。多分、殆どの方がないでしょう。「そんなもの、勉強しなくても分かってるよ、簡単さ」と思っておられる方も多いでしょう。でも、意外と難しいですよ。知らなくて損をしていることもありますよ。そこで、囲碁のルールを実際の場面を想定して、質疑応答の形で勉強していきましょう。
記事: 県囲碁連盟副会長 松本泰男

囲碁のルールを学ぼう−1
<質問>私たちは問わず語らずのうちに"あるルール"に基づいて碁を打っています。そのルールの正式名称をご存知ですか。
<答え> 『日本囲碁規約』と言います。これを「日本棋院囲碁規定」などと言うのは間違いですよ。

囲碁のルールを学ぼう−2
<質問>その"ルール"は誰が作ったものですか。
<答え>日本棋院も関西棋院も一緒になって作ったのです。もし、「日本棋院囲碁規定」であれば、関西棋院関係の人と打つときは、「どのルールで打ちますか」と確認する必要が生じますね。

囲碁のルールを学ぼう−3
<質問>皆さんは、その"ルールブック"を読んだことがありますか。
<答え>読んだ事がある人は、殆どいないでしょう。日本棋院の売店に頼めば1冊600円で送ってくれますよ。特に審判長などの世話役を務める人は、是非1冊取り寄せて勉強しておきましょう。ルールブックも読んだことがない人が審判長しているのはおかしいですよ。

囲碁のルールを学ぼう−4
<質問>死活はどのように定義されているかご存知ですか。特に死活についての認識が間違っている方が多いですよ。知らない規定もありますよ。
<答え>日本囲碁規約第7条(死活)‥(意訳してあります)
@ 相手に打たれても取られない石、または取られても(打って返しなどのように)、新たに取られない石となる石を「生き石」という。生き石以外の石は「死に石」という。
A (もうありませんね、と確認して手入れとダメ詰めをする段階での)死活確認をする場合の同一の劫は、取り返すことが出来ない。但し、劫を取られた方がパスをした後は、新たにその劫を取ることができる。

 解説 少し難しいですが、死活を実に正確に定義しています。第1項の前段は簡単ですが、後段の"または"以下は、打って返しのように、取られても取り返して復活できる石の事です。
 問題は第2項です。この規定を知っている人が少ないために、死活確認が混乱します。「死活確認の際に劫を取られたら、どんなに劫立てが多くても取り返すことができない」と、しっかり頭の中に入れて下さい。

 それでは、実例に基づいて勉強していきましょう。ゲーム感覚で挑戦して下さい。(いずれの例も、双方とも他に打つ所がなくなった状態です)

囲碁のルールを学ぼう−5
<質問> 1図と2図の黒が生きているのは誰にでも分かりますね。
でも、それは何故ですか?「目が二つあるから生き」、とか「目が二つできるからから生き」という規定はありませんでしたね。
<答え>「相手から打たれても取られない石」だから生きです。目が二つある場合と、目が二つできる場合は、生き石の代表選手ですね。

囲碁のルールを学ぼう−6
<質問>3図の黒7子と・白3子はどうなっていますか?「セキは生き」という規定もありませんでしたね。
<答え>「相手から打たれても取られない石」だから黒7子も白3子も生き石です。

囲碁のルールを学ぼう−6
<質問>4図は死んでいますが、何故死なのですか?「5目中手は死」と
いう規定はありませんでしたね。
<答え>「相手から打たれたら(いつかは)取られる石」だから死に石です。

囲碁のルールを学ぼう−7
<質問>5図は死んでいます。何故死なのですか。「欠け目は、目ではないから死」という規定はありません。同一の盤上に、両劫など、黒から無限の劫材があるとしたら、取れますか?
答え 「相手から打たれたら取られる石」だからです。例え他に無限のコウ材があっても、「死活確認の際に取られた劫は取り返すことができない」という規定を思い出してください。

囲碁のルールを学ぼう−8
<質問>もし、「欠け目は死」と思い込んでいる人は、6図は欠け目ばかりですが、死ですか?
<答え>「相手から打たれても取られない石」だから生き石です。繰り返しますが、生き石は、相手から打たれても取られない石であって、目が二つなければならないわけではありません。

ここまでは易しかったでしょう。でも、死活の定義をしっかり身に付けていただくために敢えて分かりきったことを確認したわけです。でも次からは劫がらみの問題で少し難しくなります。規定をしっかり確認しながら判断して下さい。

囲碁のルールを学ぼう−9
<質問>7図は黒の劫立てが多く白は絶対に劫に勝てない状態とします。このとき黒が、「Aと取ると半目負けになるから、手入れせず白一子を取り上げる」と主張したら、どうなりますか?
<答え>Aの手入れは必要です。「死活確認の際取られた劫は取り返すことは出来ない」という規定を思い出してください。白に劫を取られたら、黒は劫立てが多くても取り返す事はできないので、Aと逆に取られます。

囲碁のルールを学ぼう−10
<質問>前質問と似ていますが、8図で同じように黒が「劫立てが有利だからAと手入れせずに白一子を取り上げる」と主張したらどうなりますか?
<答え>Aと手入れせず取り上げることができます。

 解説黒が手入れをしなければ、白は劫を取ります。黒は直ぐに取り返すことが出来ないので、パスをします。すると白はAに打ちますが、今度は、黒はパスをした後なので取り返すことが出来ます。「死活確認の際取られた劫は取り返すことが出来ないが、パスした後は取り返すことが出来る」という規定を思い出してください。
 その後、白は直ぐに取り返すことは出来ませんので、結局白は取られる石となります。 図7と図8で分かる事は、図7の本劫は劫立てが多くても手入れが必要、ヨセ劫は劫立てさえ多ければ手入れ不要であることが分かります。

囲碁のルールを学ぼう−11
<質問>9図の黒3子と白7子はどうなっていますか? 白が、「取りにくれば劫立ては多いぞ。やらなければセキだ」と主張してきました。
<答え>白7子はこのまま死に石です。

 解説 これをセキという人が結構多いですが、『隅の曲がり4目』という固有名詞がついている有名な形です。しかし決して、『隅の曲がり4目は死』と規定されている訳ではありません。この形は白からは何もできません。黒からは9-1図1とアテ、白2取り、9-2図黒3オキ、白4と劫に放り込み、黒5取りとなりますが、白は規定によりこの劫を取り返すことが出来ないので、結局黒7と取られます。この例も、「死活確認の際に劫を取られたら、どんなに劫立てが多くても取り返すことができない」という規定を
思い出してください。
 注意すべき事は、終局の前に実戦の中でこれをやると劫になりますから、あくまで黒は終局後の死活確認の際までこれをやってはいけません。

 如何でしたか。以上は割合簡単な例でした。しかし、石の死活は決して「2眼あれば生き」、「欠け目は死」、「セキは生き」などと規定されているのではないことが分かりました。

囲碁のルールを学ぼう−12
<質問>10図。 白は、「劫立ては白が多い。aと打てば一目取られて損をするので、手入れしない」と主張します。認められますか。
<答え>手入れしなければ劫を挑まれて、黒に取られたときに取り返すことが出来ず死にます。従って、手入れは必要です。

囲碁のルールを学ぼう−13
<質問>11図はどうなっていますか。
<答え>白が死に石、黒が生き石です。

 解説 白からは何も出来ません。黒は3子取り、白中手のとき劫に当てます。白中手からアタリをかけても、黒に劫を取られると、この劫を取り返すことは規定によりできません。

囲碁のルールを学ぼう−14
<質問>12図はどうなっていますか。
<答え>白も黒も全部がセキです。いわゆる「両劫ゼキ」ですね。
 
 解説黒がaと取れば白bと取り、いつまで経っても終わりません。

囲碁のルールを学ぼう−15
<質問> 13図はどうなっていますか。
<答え> 黒が死に石です。

 解説 13-1図。白が1と取れば、黒が2と取っても白に3と打たれ、規定によりどの劫も取り返すことは出来ません。反対に黒が2と取ってきても、白は3と打つだけのことです。

囲碁のルールを学ぼう-16
<質問>14図はどうなっていますか。
<答え>黒20子は死に石です。

 解説 右側は両劫セキですが、左側の黒が死ですから、セキ崩れで黒全滅です。

囲碁のルールを学ぼう-17
<質問>15図、16図、17図はどうなっていますか。

<答え>第12条に、「対局中に同一局面反復の状態が生じ、双方が同意しない場合は無勝負とする」と規定されており、どちらかが譲らない限りその対局は無勝負となります。
 
 解説 15図はいわゆる「三劫」です。16図は「循環劫」です。この場合うっかり取ると、劫を取られて負けになりますから、白も黒の2子に放り込んでアテを打たなければなりません。これを双方が繰り返せば無勝負となります。
 17図は黒1が実に上手い手で、白2子取り、黒2子取り、黒1で元の形に戻ります。これを「長生(ちょうせい)」と呼びます。これも双方が繰り返せば無勝負となります。しかし、いずれの場合も、双方が譲らずに繰り返した場合のみ無勝負で、一方が譲れば一局としての勝負は続きます。

囲碁のルールを学ぼう−19
<質問>18図はどうなっていますか。
<答え>このままセキです。「ハネゼキ」という名前が付いています。

 解説 白が取っても黒が取っても、取った方が負けになりますから、セキです。

囲碁のルールを学ぼう-20
<質問>19図で白は、「黒がaと一目入れなければセキ崩れだ」と要求してきます。黒は「aの手入れは一目損するので手入れしない」と言います。どちらが正しいでしょう。
<答え>手入れすると黒は1目損です。殆どの人が間違えていますよ。
 
 解説 白が隅の2子にアタリを掛けたときに黒aと打てば、変則のセキ石です。

囲碁のルールを学ぼう−20
<質問>死活最後の難問です。20図、21図、22図はどうなっていますか。
いずれも、双方が打たずに終局した場面です。
<答え>20図は黒17子が死に石。21図はセキ石。22図は白14子が死に石。

 解説高段者の方はぜひ挑戦して下さい。その際、「死活確認の際、取られた劫は取り返すことができない」という規則を忘れないように。


 囲碁愛好家の皆さん、こんにちは。昨年、囲碁のルールについて初めてお話ししましたところ、私が期待した以上に全国から大きな反響がありました。「始めて囲碁のルールを知った」「本来であれば日本棋院がこのような解説をすべきだのに、良くやってくれた」「もっと色々のことを知りたい」「早速世話役を集めて勉強会を開催する」などと、嬉しいお言葉を沢山頂きました。
昨年は、『日本囲碁規約』(以下、規約)の概要と、主に死活問題についてお話しました。

 その中では特に「死活確認」について、お問い合わせが多く、3回もお電話をくださった方もいました。最も誤解が多かったのは、死活確認はどの時点で行うかということでしたので、ここで改めてお話しておきます。解説しました死活確認は、"ダメ詰めと手入れ"が完了したことを両者が確認した後、「この石死んでいますね。取り上げますよ」という時の死活判定の問題です。実際の対局が進行している途中で行うものではありませんから、くれぐれも誤解がありませんように。

 今回は特に終局時のトラブルについて、お話します。終局の規定は次のようになっています。
規約第9条−1(終局)
 一方が着手を放棄し、次いで相手方も放棄した時点で、「対局の停止」となる
 普通は、「もうありませんね」「終わりましたね」などと確認します。顔を見合わせてうなずく場合なども該当します。
規約第9条−2
 対局の停止後、双方が石の死活及び地を確認し、合意することにより対局は終了する
 これを「終局」という。この場合、ダメ詰め及び手入れは、必要着手です。
規約第9条−3
 対局の停止後、一方が対局の再開を要請した場合は、相手方は先着する権利を有し、これに応じなければならない
 「普通は、そこ手入れですね」と催促しますが、「それを言ってしまえば相手に分かってしまう」と考える人が居るかもしれません。そんな場合は「対局の再開を要求します」と言わなければなりません。この場合要求された側は、先着の権利を有しますが、手がないと思えば「パス」することができ、パスされて初めて要求した側に着手権が移ります。

囲碁のルールを学ぼう−21
<質問>「もうありませんね」と合意してダメ詰めと手入れをしていたら、ダメが空いていれば手にならないところを、詰められて黙って手にされてしまった。こんな事、許されるの?
<答え>相手に黙って手にしてはいけません。(黙って先着することはできません)

 解説 この問題は、上述の終局の規定をしっかり理解しておく必要があります。実は、合意したかどうかがプロの棋聖戦で争われたのです。挑戦者の柳時薫九段が「終わりましたね」との意思表示をしてダメを詰め始めたところ、王立誠棋聖は別のところのダメをつめてアタリをかけ、何と、打ち抜いてしまったのです。王棋聖は「終わったことには合意していない」と主張します。立会人は日本囲碁規約を読み直したり、周囲の人に確認したり、ビデオをチェックしたり大変なことになりましたが、結局王棋聖は終局に合意していないことになり、柳挑戦者の負けと判定されました。
  しかし、あくまで私個人の感想ですが、この判定には疑問を感じましたし、それ以前にアタリを掛けて打ち抜くこと自体どうかと思いました。なぜかと言えば、規約の前文後段には「この規約は対局両者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならない」とありますし、又第1条では「対局とは(中略)両者の技芸を盤上で競うものである(後略)」と書かれています。どんな法律や規則でも、前文と第1条には全体をカバーする大きな精神が書かれているからです。プロでもトップの棋聖戦で起きたこの事件は、「良識と相互信頼」や「技芸を盤上で競う」とはおよそ縁遠い話だと思いました。 しかしその後、プロの対局ではトラブルを避けるため、ダメや手入れも交互に着手することになりました。

囲碁のルールを学ぼう−22
<質問>相手に手入れを催促したが相手は手入れ不要と判断してパスした。実際に打ったら手になった。相手は元に戻して手入れをすると言うが、許されますか。
<答え>実戦が再開したのですから、元に戻すことはできません。

 解説これが許されるなら、手入れ問題は全て"打って確かめれば良い"事になってしまいます。

囲碁のルールを学ぼう−23
<質問>「もう終わりました」と両者が確認してランダムにダメをつめたら、「交互着手違反だ」と言われた。どうしますか。
<答え>ダメ詰めと手入れは必要着手ですが規約外の着手です。従って交互着手によらなくても反則とはいえません。しかし、前述したようにプロでも問題が発生することがありますので、注意深く交互着手をすることをお勧めします。この時「ダメ詰めよりも、手入れを先にする」習慣を身につけましょう。

囲碁のルールを学ぼう−24
<質問>勝敗を双方が確認して大会係に届け出た。その後、負けたほうから、「ハマが残っていたから私の勝ちだ」と訂正の抗議があった。どうしますか。
<答え>一度双方が勝敗を確認したら、それを覆すことはできません。

 解説
規約第10条−4 
 双方が勝敗を確認した後は、いかなる事があっても、この勝敗を変えることはできない
 この例のハマの場合や、2度打ち、劫立てせずに取り返し、などの反則行為があった場合でも、勝敗を確認した後では覆すことはできません。ここで問題なのは双方の『確認』ということです。質問のように大会係に届けたような場合や、対戦カードに記入した場合や、「負けました」とハッキリ言った場合などは明確ですが‥。

囲碁のルールを学ぼう−25
<質問>双方の地を整地して勝敗を確認しようとしたところ、一方が「そんなはずはない」と負けを認めなかった。さあ、どうしますか。
<答え>最初から打ち直すなどの方法で再確認します。

 解説 
規約第10条−3
 勝敗に関し一方が異議を唱えた場合は、双方は対局の再現等により、勝敗を再確認しなければならない
 この場合、異議を申し立てられた側は、確認を拒絶することはできません。しかし、アマの大会などでは、打ち直しができない棋力や、打ち直す時間がない場合があります。そんなときこそ審判長の出番で、状況に応じた裁定が必要です。

囲碁のルールを学ぼう−26
<質問>対局中に石が動いて、しばらく進行して気づいた。どうしますか。
<答え>移動した石を元の着点に戻し続行します。この場合、元の位置が合意できない時や、@元の着点にその後石が打たれている時や、A打着禁止点となるときは、元に戻すことができないので、両対局者に責任ありということで、両負けとなります。
 解説
規約第13条−2
 対局中に盤上の石が移動し、かつ対局が進行した場合は、移動した石を元の位置に戻して続行する。この場合において対局者が合意できない場合は両負けとする
 この場合も審判長の出番ですね。「両負けになりますよ」と諭しながら何とか合意させるのが良いでしょう。それでも対局者が妥協できなければ、両負け判定もやむを得ないですね。元々、石を落として崩したとか、服の袖で動かしたとか原因がハッキリしている場合は、その人に責任ありと裁定する方法もあるかもしれません。

 ここからは、「日本囲碁規約に定められていて全国共通ルールである」と誤解されている事例をお話します。

囲碁のルールを学ぼう−27
<質問>ハンデ戦では持碁になる場合がある。持碁は当然白勝ちと規定されているはずだが。
<答え>規約では。持碁は「引き分け」と明記されています。

 解説:
規約第10条−2
 (前段省略)双方の目数が同一の場合は引き分けとし、これを「持碁」と言う
 アマの大会などでは、引き分けではトーナメント戦では先に進めないし、リーグ戦でも順位の付け方等に支障が出てきます。そこで、その大会だけに適用するルールを作る事があり、多くの場合「持碁は白勝ち」となっているようです。こうなった理由は不明ですが、私の想像では、「上手に敬意を払う」という考え方から来ているのでしょうか。
 神奈川県囲碁連盟が主催するハンデ戦は、『囲碁の普及』ということが最大のテーマですから、下手に喜んで貰うよう、黒勝ちとしています。(全くの私事で恐縮ですが、私が個人的に主催する囲碁大会(変則リーグ戦)では、持碁は双方の健闘を称え、『両勝ち』としています)

◆囲碁のルールを学ぼう−28
<質問>互い先のコミは6目半と定められているはずだ。
<答え>同規約には、コミの規定はありません。コミもそれぞれの大会で独自に決めることです。

 解説 大分前ですが『アマ最強戦』という賞金付きの大会がありました。この大会では対局者同士でコミを決めました。具体的には、握って、一方が「コミ〇目半」とコールし、他方が白番か黒番を選択します。例えば、相手は黒番が得意と見れば、「コミ9目半」等と黒番を持ちにくくするようにコミを設定する訳です。

囲碁のルールを学ぼう−29
<質問>持ち時間は45分と定められている。
<答え>同規約には、時間の規定もありません。持ち時間はそれぞれの大会で独自に決めます。

囲碁のルールを学ぼう−30
<質問>手合い時計を使っている対局で、多数の石を取り上げる時は、時間切れを防ぐために、一部だけ取り上げて時計を押しても構わないはずだ。
<答え>同規約では、取り上げるべき相手の石を全て取り上げて着手が完了する、と規定されていますので、着手が完了していないのに時計を押すのは明らかに違反です。
 
 解説:
規約第5条
 (前略)相手方の石が盤上に存在できなくなった場合は、相手方のその石全てを取り上げ(中略)石を取り上げた時点をもって着手の完了とする
 もしこれが許されるなら、例えば5目中手の石を取り上げるのに時計を押して急所の石を後からユックリ取り上げたとすると、その間相手は急所に打てないのに相手の時計は動いていることになります。これはもう規約とは関係なしにハッキリおかしいですね。


 如何でしたか。昨年、今年と『日本囲碁規約』そのものを、一問一答形式でお話してきました。囲碁を愛好される皆様は、是非勉強しておきましょう。
 ただ、全ての場合に規約どおりであれば良いとは言えないでしょう。例えば親しい人と楽碁を打っているとき、相手が劫立てせずに劫を取り返したとして、「あんたの反則。私が勝ち」と言って石を崩してしまうのが良いか、「あ、劫立てしていませんよ」と注意して続行するのが良いかは、『対局両者の良識と相互信頼の精神に基づいて運用されなければならない』『両者の技芸を盤上で競うもの』という精神を大事にして判断しましょう。
 また、審判長をされる場合は、必ずマスターしておかれないと、思わぬトラブルになるかも知れません。規約外の判断には、勝負の重要性や対局者双方への説明、説得が必要になりますね。
 私達が大会に参加した際、対局開始前に審判長から試合上の注意があります。その場合に、日本囲碁規約の注意は殆どありません。誰もが共通に知っているという前提に立っているからです。
 これに対して改めて説明がある、例えば、手合い割り(置石・コミ)、持碁の取り扱い、持ち時間等はその大会だけに適用される規則(ローカルルール)であることが分かります。
 更にマナーなどの注意もありますが、これはルール以前の問題ですね。そうそう、来年はマナーの問題をお話しましょうか。